カサブランカ
仕事帰りに花を買った
ギリギリ閉店10分前に間に合った
名前はカサブランカ
百合の一種らしい
家路に着くと娘が大泣きしている
嫁さんは半分寝ている
花を渡すような空気ではない
娘を抱き上げてベランダに出る
部屋は5階に位置しているのだが
高いところで
尚且つ景色を見下ろせるような
位置に居ると
何故か必ずと言っていい程
自分が抱えているものが
落下した時の事を想像をしてしまう
一瞬
娘が落ちてしまうイメージが頭を過ぎり
怖くなって
娘を少しぎゅっとする
暫くすると落ち着いたのか
上空に指を指して
いつものように
何を言ってるのか解らないけど
何かをごにょごにょ話している
視線の先には小さく
赤と緑の光が点滅している飛行機が
夜空に浮かんでいる
飛行機が飛んでるよ
とでも
言いたかったのかな
すっかり泣き止み
寝室に戻ると嫁さんは爆睡している
娘を寝かしつけ
洗濯機を回し
お湯を沸かし
カップ焼きそばを食べる
洗濯物を干す
嫁さんの下着を
洗濯バサミに挟むのって
なんだか微妙な気分になる
異性に対する幻想が消えるような
見慣れてしまいたくはない代物だが
これが生活か
流石に食器を洗うモチベーションは無い
この辺で気を緩めると
忽ちに意欲が零になる
シャワーなど浴びて
洗髪などしてしまえば最後
眠気に抗う意識も零になる
だから今日こそはと家を出る
しかしながら
無事に近所のファミレスに
辿り着けたとしても
結局眠気に襲われて
WEBデザインの雑誌を開いた状態で
座ったままに数分間
眠ってしまった
すかさずに
コーヒーを飲みまくる
明日の朝
花を手渡そう