管路

感情を殺害する
という作業に慣れてしまった

そうなると自分が
どんな時にどう感じているのかが

解らなくなる数が増えてくる

お陰様で現在は
自分と心を繋いでいた回路の
断絶を感じている

もう揺れている事に気付かないし

それが少しでも
動いているのかすら怪しい

心にアクセス出来ないから
それらを表現する術さえも失った

今更必死に手を伸ばしたところで
何の手応えも無い

圧倒的な遮断が有るだけだ

きっと信じる事を放棄した代償だ

疲弊して擦り減って忘れた末に

緩やかな衰退に
身を委ねるしか術が無いところまで
来てしまった

そんな状態にまで自分を
追い込んでしまった事が
本当に申し訳ない

今出来るのは
映画を見る時間を設ける事を
心掛けるくらいだ

揺れないなら

能動的に感情を揺らしに行くしかない



僕にとって社会は基本的に
自分に嘘を付かなければならない場所だ

それはマナーの一種であり
自衛の一種でもある

価値観の遠い人と同じ場所に居る事は
それだけで非常に面倒で苦痛だ

自分が歪むか
環境を歪めるかしか
美徳の行き場が無いからだ
(だからこんな場所を必要としている)

しかしそれこそが
自分の幅を広げる事に繋がる

と云う見解

それも一理有る

只自分自身が
面倒な気質を備えている事も有り

幅を広げたいと望んでもいない
自分としては

熱が冷えるのを
心底嫌うだけである



バランスを崩せば
無意識の内に環境の持つ流れや
うねりにジリジリと引っ張られてしまう

自分の軸を堅持するには
其れ程のエネルギーが要る

僕にはそれが不足していた

それだけだ



でも未だに自分を諦めてはいない

虎視眈々と
未来に種蒔きをするしかないから

続ける事で繋いでいく熱を
どうにか冷えないようにする作業を
選び取る

その時間だけは
相変わらず誰にも邪魔されたくない