名前

上京してきてから
かれこれ6年くらい経った

最初から今に至るまで
ずっと同じ美容室に通っている

違うところに行ってみようかと
幾度か悩んだ事もあったけど

結局面倒で億劫で
そのまま現在進行形だ

そんな美容室で
少し前に
こんな出来事があった



髪を切り終えて

シャワーヘッドから出るお湯で
切られて散らかった髪を流し

その後イスに案内されて座っていた

すると
後ろから声がして
振り向いたら「これ柿沼さんのですか」
という言葉と共に
髪型の写真の切り抜きを差し出された

正に自分のだった

受け取ってまた前を向いた

恐らく座った時に
ポケットから落ちたようだ

僕は大抵
気に入った髪型が載ってる雑誌の
写真の切り抜きで
イメージやニュアンスを
伝えるようにしている

その方がお互いに端的に済む



そんな事はいいとして

それを差し出してくれた
指原莉乃似の美容師さんが
この街に来てから
初めて担当してくれた人で

つまり6年前に
髪を切ってくれた人だったのである

ここ3年くらいは
Kis-My-Ft2の藤ヶ谷 太輔似の
尊敬している美容師さんに
お願いしているのだが

それまでは特に
指名等は無しで通っていた

そんな大分昔に接しただけの人が
さり気なく
自分の名前を覚えていた事に
兎に角びっくりだった

切られた側は覚えてるとしても

切ってる側からすれば
毎日毎日多くの人と接する中

6年前に髪を切った人の名前なんて
覚えている訳が無いし
自分だったら絶対覚えてない

という思い込みをぶっ壊す一言に

驚愕と同時に
嬉しさが込み上げて来たのである

自分の知らないところで
自分の何かが
誰かの記憶に存在している事が
こんなに嬉しいものだったとは



そんな事が
嬉しかった事を知った

そんな出来事